中江三青のブログ

窓よりも大きな太陽夏休み / 三青 ( 第6回西東三鬼賞 )

2019年09月

おとこたちが
宇宙旅行に
でかけて

おんなたちが
地球の
るすばんをしていたら

おおきな
化粧品会社が
つぶれてしまった

それでも
素顔の
おんなたちのこえに

ほおずきの
淡黄白色の花が
したをむいてさきはじめる

なめらかに
地球は
まわりつづけ

ほおずきが
祭の色になるころ
おとこたちがかえってくる

すこしばかり
異邦人の
顔が入って

過去を
もちだして
ゆれるときも

未来を
かくして
ゆれるときも

海の色を
かすかにみせるのは
遠くへゆきたいためか

海の色は
かがやく空の
波の群れなのだろうか

上からではなく
下から
夕日をあびるとき

一歩も動かずに
立ち枯れてゆく
運命に目をとじる

ほんの
かすかであるが
だれにでも

ほほえんで
しずかに
ゆめをみている

袋を
はずされた
白桃は

はにかむように
もうすこし
ゆめをみていたいらしい

白桃を
むこうとすれば
こどもたちの

くちが
とんがって
いきがとまり

白桃の
知らなかった
傷があらわれる

おなかの
なかにいた記憶さえ
まったくないのに

それよりまえの
記憶など
ありうるはずがない

それでも
その時
ポンと言う音を

夜明けに
きくことができれば
何か思い出すかもしれない

しかしポンという音は
人間にはきこえない
あの世のものかもしれないが

フライングをするように
露がころんで
蓮池にとびこんだとき

朝日をうけながら
静かに
白蓮が開きはじめた

時計草は
砂時計には
興味がないのだろうか

ポンと
砂時計を
ひっくりかえすと

サラサラと
砂は過去へもどり
時は未来へすすんでゆく

この砂は
あの大砂丘の
砂なのだろうか

いつも
大砂丘をみている
時計草が

全世界の
時計を
しっているように

めずらしく
上空をとんでゆく
国際便を見守っている

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